やさしい革の話。

昨日の午後は、墨田区で皮なめしをされている、
山口産業さんの工場見学に参加してきました。

元々、芝浦に広げて置いてある牛の皮を見ていたり、
内澤旬子さんの「世界屠畜紀行」などを読んでいて、
自分が取り扱っている牛さんたちの皮がその後、
どのように扱われているのか、
知りたいなぁ、知っておかないとなぁと、
ずっと頭の隅っこで興味を持っていました。

さらに、自分の牛である、ゆめちゃんが昨年誕生して、
すごい大事な子なのに、最後お肉にして食べたら
なにも形に残らないのは寂しいなぁと思って、
革になって、私が日々身に着けられるもので、
ずっとお付き合い続けられたら、こんなに嬉しいことはないな、と
改めて、皮の世界に興味が深くなっていました。

でも、同じ牛や豚を扱っているとはいえ、
お肉屋さんたちとはまた、まったく別の世界で、
自分とは、なかなかご縁がなく、
直接、皮の話を聞く機会がありませんでした。

でも、そんなときにふと、お肉の業界とはまったく別の方から
山口産業さんのお話を聞く機会があり、
ひょんなご縁に、これはチャンス!と、
「ぜひ説明会などあったら参加させてください。」
とお願いしていて、先月、とあるセミナーに参加してきました。

そのセミナーはシカやイノシシなどの獣皮を有効資源化し、
産地活性に繋げましょう、という「MATAGIプロジェクト」という活動のお話でした。
それぞれの産地で取れたシカ、イノシシなどの皮をそのまま捨てないで、
山口産業さんでなめして、革にして産地に戻すので、それを活用して
産地それぞれの活性化に繋げてもらえないだろうか、という取り組み。

さらに、山口産業さんは『ラセッテー』という、
植物タンニンでなめす製法を取られていて、
重金属系のクロムなめし剤を一切に使わないという、
エコロジー認定もされているような、こだわりのなめし屋さん。
(赤ちゃんが触ってもアレルギーが出ないやさしい革とのこと。)

山口産業さんホームページ

お話を聞いて、もちろん出口(販売の仕方)などで今後の課題はあるものの、
面白いなぁと思って、いつかやっぱり、自分の牛の皮もお願いしてみたいと、
昨日の工場見学に参加してきました。

まずはなめしの工程の説明を聞いてから工場の中へ。

ちょうど、熊やシカの皮が届いたところ、とのことで見せて頂き。
写真 1

脱毛は職人さんに外注しているそうです。
脱毛した後、石灰に漬けて繊維をほぐして、石灰を抜いて、
というのが準備工程。

そのあと、厚さを均質にする前なめしをしてから、
植物タンニンを成分として、本なめしを施します。

なめした後に、それぞれの色ごとのドラムで染色。

写真 2

ちなみに、木のほうが保温性があるので、木製のドラムを使われるとのこと。
もう50年ものの、年期と歴史を刻むドラムだそうです。

そのあとは水分をある程度切ってから、丁寧に1枚ずつ吊り乾燥です。

写真 3

この季節は乾くのに時間がかかって、2日間くらいかかるそうです。

実際になめした後の革を触らせて頂きました。
シカの皮はとてもなめらかで良い触感で、
今まで捨てていたとは、なんとももったいない感じでした。
写真 4

山口産業さんの取り扱いは、豚の皮がメインとのことでしたが、
いろんな畜種の皮も取り扱われていて、牛の皮もありました。
こちらの革は北海道産の牛とのことでしたが、
産地と繋がり、沖縄の石垣牛などもなめして、産地に戻しているそうです。
写真 5

いわて牛もいかがでしょうかね~笑

写真

そして、最後にお話を聞いてて、国産の豚の皮の9割以上が
国内で加工ができていない状態で、海外に輸出されてなめされていること。
また、下請けの職人さんたちの高齢化が進んで、
どんどんできる人が減っていること。

なんか、、、どの世界でも出てくるキーワードだなぁと思って、
聞いていました。

まず、大きなと場だと、1頭の牛の皮を引っ張ってくるのも難しく、
いろいろとハードルはあると思いますが、やっぱり、
いつか、自分の牛の皮をなめしてもらいたいです。

そして、もっと幅広く、産地革として考えるのであれば
個人的な愛だけでなく、産地全体の愛や技術を繋げて考えていきたいなぁと。

そして、先日ある生産者さんに教えてもらった、
こんな良い絵本があるみたいなので、
たくさんのこどもたちに(特に身近に牛がいるこどもたちはなおさら。)
読んで知ってもらいたいなぁと思います。

『きみの家にも牛がいる』

「人間は、牛の命をもらっている。
そして牛の命をいかすのも、人間。」