熊本再訪②~産山村を訪ねて。

「熊あかの名人と言えば、井さん。」

熊本あか牛とは長年、直接繋がりがなかった自分でも
この言葉は何人もの方々からよくお聞きしていました。
そして、熊本あか牛を育ててる『井さん』が
何人かいらっしゃることは最近、知りました。
(岩手でいう『千葉さん』のように。笑)

そんな井さんたちの牧野に今回は宮本シェフが連れていってくださるとのことで、
やっとお会いできる~と嬉しくて。

前回、中村さんたちが牧野に連れていってくださった時に
外輪山を走る「ミルクロード」の話を聞いていて、
今回はそこを通るっていうだけで、まずワクワク、朝から大興奮。

熊本県の地図を買って、自分の立ち位置を把握しながら、
日本の草原の半分以上が阿蘇にある(!)っていう話を聞いたり、
それを目の前に広がる大草原で体感して
「おぉ~!牛さんたちのゴハンがいっぱいだぁ(≧▽≦)」
ってテンション上がりながら、産山村まで向かいました。

まず、井(信行)さんと合流して、一緒に
前日の勉強会にも来てくれていた井(俊介)さんの牧野に。

写真 3
とっても良いお天気にも恵まれた日でポカポカ、
牛たちも気持ち良さそうでした。

写真 1 (1)
この仔牛ちゃんたちは、牧野で生まれて、そのまま育っているそうです。
2月にこの光景はやっぱり、それぞれの土地の持つ特徴を生かしてくれる、
牛種や飼い方があるんだなぁと感じます。

写真 5

写真 4
牛たちを前にしての立ち話でしたが、
なかなか濃ゆい話がたくさんできました。

放牧であか牛を肥育するという、これからのチャレンジ。
それは手間やコストを下げることのように一見思われるけど、
放牧に伴うリスクは大きく、事故などで1頭70万円の仔牛の損失は大きい。
それを細々とした観察でどこまでフォローできるのか、
信行さんがあか牛の繁殖成績で優秀な成績を残して
表彰されたときの牧野の観察管理のお話をしてくれました。
誰にでもできることではないんだろうと思います。

そして、草で育てればゆっくり時間をかけて
太らせていくことになる。
重量の問題もある。
それが今の仔牛の単価と、枝肉の単価で合うのか。
枝肉の単価だって、どこまでも上がればいいというわけではなくて、
みんながそのお肉を口にできる単価でないと、そもそも飼うことができない。

短角牛にも繋がる話で、話をしていて、
生産者・料理人・流通、それぞれの立場ですが、
共通する想いを感じることができました。
誰かだけが良い思いをしても、それは長く続かない。
なんとか、みんなが笑顔になれるように。
そのために、みんな考えて考えて、
なにか良い方法がないだろうかって模索しているわけです。

そして、続いて信行さんの牛舎へ。

写真 4 (1)

写真 2 (1)

写真 3 (1)

なんと、驚いたことに、信行さんの牛舎にはあか牛の他に、
9頭のジャージー、1頭のブラウンスイスがいたのです。

私が去年、岩手の雫石でスタートしていた
ジャージー計画と同じことを考えて、
あか牛の名人、井さんがすでにスタートしていました。
(しかも、ブラウンスイスが1頭いるっていうところまで一緒。笑)

これだけすべての仔牛が高くなっている中で、
いまだにスモール市場で0円の値がつく、ジャージー雄仔牛。
そして、そのお肉は美味い。
あか牛、短角牛の次のお肉として、可能性があるじゃないか、と。
(お肉がきちんと評価されるようになれば、雄仔牛の評価だって変わります。)

そして、先日30ヵ月齢で出荷した枝肉は380kgだったそうで(!)、
あと半年肥育すれば、420ー30kgにもなると断言する井さん。
ジャージーでここまでの重量を出せることが証明できたのは、
すごいこと。
しかも、「昔の牛はみんな草で育ったんだ」という、
井さんらしく、草を主体にあげて育てています。

私もそうだけど、やっぱり新しいチャレンジには
「そんなの無理だよ。そんなに甘くない。」
って反対する人たちもたくさん。
井さんも同じような声にも出会ったそうです。
でも、重量が弱点のジャージーでそこまでの重量の結果を出したら
全然、光は見えてきます。

そして、そのお肉で試食会をしたら、美味しいって大好評だったそうです。
井さんは「南小国のブランドにしたいと思っているんだ」と楽しげに。
80歳を超えて、新たなチャレンジに向かう井さんに脱帽です。

まさか、熊本あか牛の名人に会いにいって、ジャージーの話で
意気投合するとは思いませんでした。

「あんたもジャージー飼ってるのか?!」
「面白いなぁ、一緒になにかやりましょう!」

距離はあるけど、これだけ、ネットでも繋がれる時代。
岩手・熊本・東京で、同じ想いで動いていれば、
なにか手を繋いで、やれることもたくさんある気がします。

まずは情報共有だけでも、得るものは大きい。
どのような飼料で、どんな飼い方をすれば、きちんと大きくなって、
美味しいジャージー肉を安定して、供給できるのか?
何ヶ月齢くらいがジャージーの美味しさを一番引き出して
あげることができるのか。

うーん、大興奮。
本当、動いたら動いただけ、面白い出会いが転がっています。

そして、その後は井さんが食べてみたいお肉があるということで
井さんのご自宅で、(贅沢にも!!)宮本シェフに焼いて頂いて、
4人で試食会を兼ねたランチ。

写真 1 (2)

写真 2 (2)

こちらはあか牛で、群の中で負けちゃった子で、30ヵ月齢で260kgくらいの枝肉だったらしくて
ストレスは相当あっただろうに、そのお肉は味がしっかりあって、美味しかったです。
これだから、お肉は単純じゃなくて、いろんなことを考えさせてくれるので、面白い。

きっとストレスもあったけど、最後にホッとしてストレスから解放されて、この旨みが出たのか?
それともストレスとか、あんまり関係なくて、やっぱりエサが出す旨みが強いのか?とか。

そして、食事後も、飛行機の時間ギリギリまで、大先輩お二人と牛談義。
写真 3 (2)

それから、前回の熊本訪問のときにお会いした佐藤勝明さんの牧野にも寄らせて頂いて、
だだっ広い牧野の中にいる、放牧肥育中の2頭のあか牛にも会えました。

ポカポカで良い気持ちでウトウト、寝そべる2頭にとっても癒されました。笑

写真 5 (1)

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そして、勉強会の後、臺さんが「ちょっと待ってて!」と言って
買ってきてくれた晩白柚(バンペイユ)が今日、事務所に届きました。
写真 3 (3)

早速、部屋中に良い香りを放ちだしてくれています。

今回も大充実の熊本時間を過ごさせて頂いたことに感謝。
本当にありがとうございました。

また青草の広がる季節に、お邪魔できる日を楽しみにしています。