田村牧場短角牛のこと。

今月も田村牧場の吊るし短角牛の加工がスタートしました。

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(24.4カ月齢♂・431㎏)

年明け1.2月の一番長かった31-32カ月齢くらいの時期を越えて、
今月は一番月齢が短くなって、24-25カ月齢です。
ここからまた来月出荷分あたりから
26、27カ月齢と徐々に伸びていく予定です。

自然交配が主体の短角牛はどうしても一年を通して、
月齢が長いとき、短いとき、出てきます。
良くも悪くも、肉質にも季節感がしっかり出てくるので、
扱ってくれる方々が、目の前にある「お肉」が、
「牛」という自然な生きものであることに皆気づいてくれます。

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月齢や時期の差はあれど、どの短角の産地も同じで、
「うちはもう短くなったよ。」
「うちは来月くらいから。」
っていう短角あるあるの会話が仲間内でできるのは
真剣に地道に向き合っているもの同士だからこその、
楽しさも大変さもその会話に集約されていて、なんだか嬉しい瞬間です。

また、田村牧場は元々、繁殖・肥育一貫で、
短角牛を育てていましたが、数年前の短角牛ブームのときに
あまりに短角牛の仔牛市場の相場が上がったために、母牛の更新
(種がつきにくくなった母牛を出荷して、新しい母牛を導入すること)
が思うようにできなくて、生まれてくる仔牛の頭数が減りました。

ブームが来ても、ブームが去っても、
淡々と変わらない姿勢で、短角牛を育ててくれて、
私も変わらない姿勢で、枝で吊るし熟成をして販売してきました。

「牛の頭数を増やすためには、デントコーンの作付け面積を増やさなければいけない」
という話を聞いて、それまでは黒毛和牛の肥育しか知らなかった私に
その地域だからこそできる、自家産の餌で育てていく、
赤身牛種の価値と、そして、大変さを教えてくれました。

牧草も、米ももちろんなのだけど、田村社長は
9月のデントコーンの収穫は一年で一番神経を使っていて、
『台風に倒されてはしまっては台無し、
でも栄養ができるだけ一番ある状態で刈り取りしないと、
その後、1年分の短角牛のお肉の味わいの良し悪しに影響がでる』
と、その年の夏の気候に影響される育ちの速度を確認しながら
秋になれば、台風の通り道にヤキモキしながら、
どのタイミングで一斉に収穫するか、
すごい神経を使っているのかが良く伝わりました。
天気が良い日は電話をするのも躊躇して、
電話する前に、久慈の天気を確認する癖がつきました。

自分が時々、牧場まで行ったときも、
太陽が出ている間は少しでも農作業を進めたいので、
放牧地に放たれて、牛と一緒に放牧されていて、
日が沈んだ後にやっと拾ってもらって、向き合ってもらえるというのは常々。
「ごめんね、根っからの百姓だから、太陽が出てるともったいなくて
 机に向かってミーティングとかできないんだ。
 それがとても大事だってことはわかってるんだけど、、」
って最初の頃に、言われました。
7年くらいお付き合いしてきて、
いろんなことを少しずつ教えてもらったり、
大切なことに気づかせてもらってきました。

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お蔭さまで、今の自分の各産地の生産者さんたちとの、
あか牛、ジャージーなどの取り組みに繋がっていると思います。

そして、話が逸れましたが、
そんな風に生産現場が変わらない中、
ブームがやって来て、一時、短角牛の仔牛の単価が高騰した影響で
母牛が減ったために、肥育素牛が減ってしまいました。

その時に、一貫生産にこだわるのか、
それとも肥育素牛を市場導入する形で、安定した頭数を供給していくのか。
どちらを選ぶにしても、それぞれの牧場の判断だと思いますが、
私は後者を選んだ田村社長に賛成しました。

もし、母牛を10カ月齢で導入して、1歳過ぎで種付けをして、
10カ月後に産んで、2年半育てる、となると、
母牛の導入から3年半~4年後に初めて、お肉になってくれるわけです。
生産者さんも経営です。
こだわる部分と譲る部分、常にみんな選んでいると思うのですが、
私はいつも思うのは、『とにかく長く続く形を選択して欲しい』と思います。

一つのことにこだわり過ぎて、
単価、肉質、供給量、、、
出口が求めていない形になってしまっても、
結局は終わってしまいます。
また、逆に一時の出口のニーズに寄り過ぎても、
ブレブレになって本来の大事なことを見失なってしまうと思います。
その譲らない『柱』みたいなものを
生産者さんと販売者が共有できたら
細く長く続く形で継続ができるのかな、と思います。

そんな市場導入の子たちが去年の秋から出荷が始まっています。
その子たちが食べているメインの餌が、田村牧場のデントコーンです。
去年は「少し水分量が多い」と話していましたが、
「今年の仕上がりはとても良い」とのことで、
そんな影響もあるのかもしれないですが、
ちょっと心配していた月齢の割には、みんな、
枝肉重量、肉質も比較的しっかりしています。

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そして、扱っていただいた方々の良い評価、悪い評価、
どちらもがありがたい貴重な情報であり、
それを生産者さんと共有していくことで、
一緒にこれからも長く続く畜産の形を探っていきたいと思います。

来月はまた久しぶりに田村社長と短角牛たちに会いに行ってきます。
これからも短角牛たち共々、末永くお付き合い頂けたら嬉しいです。