3月が近づくにつれて、やっと少しずつ暖かい日も増えてきました。
そんな中、やってきてくれたのは福島・エム牧場さんの短黒牛♀です。
エム牧場さんが震災後、牧場のオリジナルブランドにと、
力を入れて取り組まれてきた短黒牛。
赤身の旨味が強い「短角牛」と滑らかな肉質の「黒毛和牛」の
良いところどりでバランス良く、今まで扱った子たちも
それぞれのお届け先からとても良い評価をいただいてきました。
そんな短黒の中でも、今回の子はちょっと育ちが違います。
この子は2歳を迎えた夏に岩手・釜石にある山一つ分の放牧地に上がり、
最後の約半年を山で過ごした子になります。
その間、食べていたのはほぼ草のみ。



こちらの『和山牧場』は全盛期には1,000頭近くが放牧されていたそうです。
が、震災後は生産者さんの高齢化や担い手不足のため、
どんどん山に上げる頭数が減ってきていたのですが、
それをなんとか食い止め、
「貴重な草資源、また放牧地を生かしたい」
と釜石市が数年前からエム牧場さんにご相談されていたとのこと。
昨年は地元農家さんたちの15頭程度のみになる予定だったのを
エム牧場さんが新たなチャレンジを決断され、
いろんな牛種、多様なステージの25頭を山に放牧しました。
育成や繁殖のための放牧ではなく、お肉として仕上げるための放牧です。
その詳しい内容はこちらの記事に素敵にまとめて頂いています。
釜石・和山に肉用牛25頭放牧 エム牧場(福島県)が新たな挑戦! 消費者求める付加価値づくりに意欲 | かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす
こんな環境で育った牛たちのお肉をちゃんと皆さんの元に届けることで
地域の皆さんが懐かしがる、かつての光景を取り戻すことができるなら、
そんな嬉しいことはないと思います。
ただでさえ、粗飼料も含めて輸入飼料の高騰が続いています。
国内にある草資源を生かした畜産の形が今後より一層、
求められていくはず。
とはいえ、肉牛の放牧仕上げはエム牧場さんも初めての取り組み、
いろんな試行錯誤をしながら、放牧肥育に向く牛種やステージが
少し見えてきた1年目になったようです。
今回の子はその中の1頭の短黒牛♀になります。


今までの牛生の中で放牧に慣れていた経産あか牛だけは、
太って山から帰ってきたようですが、
他の子たちは少し締まった健康的な姿で帰ってきたので、
当初の予定を軌道修正して、最後の3カ月、
再度いつもの餌で少しお肉を整えてもらって
「そろそろ良い感じで仕上がってきましたよ」とのことで
今回の出荷になりました。
その仕上げの餌もできる限り、ナチュラルな内容で
デントコーン、稲WCS、牧草、キノコの廃菌床、酒粕に加えて、
モネンシンフリーの配合飼料を1日3㎏程度です。

この放牧期間6カ月+仕上げ3カ月が肉質にどんな影響を
与えてくれるか、興味津々です。
先に届いた格付けはこちらでした。

まずは、なんとか400㎏近くまで枝重量乗せてくれて良かったなぁと。
BMS2点と、期待通りの赤身。
濃いめの肉色は育ちや長めの月齢の影響があるのかな、と。
脂の色は草由来の黄色味が強すぎるわけでもなさそうです。
実際の内容はこちらでした。
ロース芯。

バラ。

モモ。

脂質。

切開面。


枝肉全体。

同じ2等級でも、やっぱり黒毛の血が半分入っていると、
純血の短角とは仕上がりが違います。
野性味の強い短角牛に、黒毛の繊維のきめ細やかさが
枝肉の雰囲気からちゃんと伝わってきます。
さらに、そこに仕上がり時期の半年間の放牧が
どのように肉質や味わいに影響してくるのか、
とても楽しみです。
私も放牧地で何度も会っている子。
お肉になってからもみんなに愛してもらえますように。
こちらはもう少し枝で枯らして、3月上旬の加工予定です。