やっと地方との行き来が堂々とできるようになって
この子の出荷直前にも会いにいくことができました。
そんな当たり前のことが本当にうれしい。
岩手・雫石の中屋敷ファーム、今年最後の出荷牛です。
37.3カ月齢のジャージー♂です。
もちろん、生まれはいつもの奥中山の三谷牧場さん。
そして、4カ月齢。
離乳して、たっぷりの粗飼料で身体を作り始めた頃。
まだ幼なさが残る顔ですが、
顔の毛がずいぶん黒くなりました。
13カ月齢くらい。この頃からずっと、
8月に出荷になったジャー黒くんとペアで暮らしてました。
この後、1年くらいの間は通常の配合飼料で育てられていましたが、
その後、東北農研さんと、中屋敷ファームの共同研究がスタートして、
今年に入ってからは、地域の国産飼料100%で育てられました。
「有機大豆サイレージ」「デントコーンサイレージ」「一番草」の粗飼料主体に加えて、
濃厚飼料としての「子実トウモロコシ」「雫石産のくず小麦」「もみ米サイレージ」
を入れた餌です。
すべて雫石周辺の地域で育てたものです。
東京宝山で扱わせて頂いている牛たちでは、
熊本の井さんのあか牛も、岩手の田村牧場の短角牛も
地域の餌を主体として育てているので(あか牛100%・短角牛95%)
つい身近に感じられてしまうかもしれないですが、
これは実際、日本の畜産ではかなり珍しい、すごい取り組みです。
というのも、日本の畜産の飼料自給率は、
2013年度で、粗飼料は77%、濃厚飼料は12%、トータルで26%です。
そうして、その発表の時点で2020年度の自給率の目標値として、
粗飼料は100%、濃厚飼料19%、トータルで38%を掲げています。
でも、実際にそれから6年が経過した2019年度でその数値は
上がったり下がったりしながら、大きく変わらず、
粗飼料は77%、濃厚飼料は12%、トータルで25%です。
※参照元
https://www.alic.go.jp/content/001173166.pdf
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/bukai/h2608/pdf/ref_data1-2_rev.pdf
これが2020年度、2013年に掲げた目標値に一気に近づいたとは思えず。
国産といいつつ、その身体の7-8割は輸入したもので育っているのが現実です。
そして、報道でもあるように、コロナ禍での世界の労働力不足や、
先に経済回復した大きな購買力を持つ中国に買い負ける形で
輸入牛肉に加え、輸入飼料の高騰が続いています。
想定していたことが、コロナの影響でさらに時期が早まった感覚です。
ちゃんと未来に続いていく、日本の畜産の形を考えるのであれば
それぞれの地域にある良質な資源を生かしていく方法を考えていくのは
ごくごく自然な気がします。
地域内循環による、食糧安全保障。
とはいえ、一人でできることはもちろん限られると思うので
耕畜連携が大きなポイントになる気はしますが。
あと、国をあげて、その方向に向けた補助と。
生産現場にいって、農家さんたちが実際に感じていることを
共有させてもらいながら、自分の肌で感じ、見聞きすることで、
東京にいて、本や数字に向き合っているのとは違う現実味が感じられて、
自分にできることをやらなきゃって改めて気合いが入ります。
思わず、アツくなりますが(笑)
生産者、研究者の方々の、そんな未来に向けた想いが詰まった1頭です。
向かって左の子です。
あんなにガリガリだった子が3年かけて、
ここまで丸々と立派に育てあげてもらいました。
ジャージーでここまで立派に仕上がったのは初めてで、
生体重830㎏、なんと枝肉重量486㎏になりました。
生体からの枝肉歩留りもいつもジャージーは55%が
定番だったのですが、58.5%になったのも凄いこと。
実際の枝肉内容はこちらです。
脂の色は、飼料の配合バランスの影響で
前回の餌よりも抑えめのクリーム色です。
肉色はジャージーらしい濃い色でしっかりとした味わいがありそう。
同じ餌で育っていても、黒毛の血が半分入っていた前回の子とは
まったく違う赤身寄りのお肉。
ジャー黒、ジャージー、それぞれの個性を
楽しんでもらえると良いなぁと思います。
ましてや、37カ月齢もかけてここまで仕上げた
ジャージーはなかなかいないよなぁと。笑
そして、とにかくジャージーは懐っこいので、
どこに行っても可愛がられるわけで、
岩手での出荷のときも、その立派な仕上がりも含めて
みんなのヒーローで、撮影会になっていたみたいだし、
芝浦に到着してからも、知り合いのドライバーさんから
「懐っこくて可愛いから、なでなでしてきましたよ~」
って連絡もらいました。
絶対、きっとそういう愛され方もこの子の肉質に影響あるだろうなぁ
って思っている私です。
可愛がってくれた皆さん、ありがとうございました。
私にやるべきことはこの子をできる限り良い状態で、
求めてくれる方々にお届けすることで
この子のお肉をちゃんと最終的に生かしてあげること。
頑張ります。
2週間ちょっと枝で枯らして、11月20日頃に加工予定です。