こちらは、私が大好きな国分牧場さんの光景です。
「みんなちがって、みんないい」
そんな考え方を国分牧場さんでは実践されていて、
メインの牛種であるホルスタイン以外にも、
希少牛種であるジャージー、ブラウンスイス、ガンジー、エアシャー、
加えて、それらの黒毛との交雑牛など、多様な品種を飼われています。

そうすることで、本来なかなか行き場のない、こうした牛種たちの男子が
酪農家さんで生まれたときの出口の一つとなっています。
1頭ごとに大きさや肉のタイプが違うことは
安定性を目指すのであれば、欠点となりますが、
毎回のその違いを楽しむと考えれば、その個性は長所になります。
何事も捉え方ひとつ。笑

そうして今回やってきたのはこちらのブラウンスイスくん。
その名も「プリンス」くんです。
そんな王子は、東京・八王子の磯沼牧場＆
　　　　　　　　埼玉・東松山の国分牧場タッグの1頭です。

生まれ元の磯沼牧場さんでの哺育は、粉ミルクではなく、
全乳（お母さん牛たちのミルク）。
そして、住宅地が近い環境から、お腹を減らして鳴かないように
粗飼料をたっぷりあげて育てています。
加えて、カカオの殻と、コーヒーの搾りかすを敷料に使われたり、
コエドビールのビール粕をはじめとした様々なエコフィード
（食料副産物を使った餌）も積極的に与えられています。
畜産業を生業とする環境として恵まれた、地方ではなく、
都市近郊で牧場を続けていく1つの良い見本を見せてくれています。

そうして、その後は国分さんのところで、
モネンシン（抗生物質）フリーの餌と、同じくコエドビールのビール粕、
地元の稲わらなどで、育て上げてもらうことで
みんなから「あ、国分さんの味だね」って言ってもらえる、
脂質も軽やかな、安定した味わいに仕上げてくれています。

国分牧場さんに関してはこちらのご紹介動画をぜひ。
『地元・埼玉県産の地域資源を活かして希少な乳用種を育てる国分牧場』

私も10月に訪問したとき、プリンスに挨拶させて頂きました。

ブラウンスイスの乳は乳脂肪分に加え、たんぱく質の含有量が高いので、
チーズやバターに向いている乳を出してくれることで今は有名ですが、
元々は『役肉兼用種』（農作業用＆肉用としての牛種）だったそうです。

ブラウンスイスは久しぶりなので、再度。
下記、『品種改良の世界史』より、抜粋です。

***********************************************************************
【世界的な背景】
スイス北東部原産。歴史の古い品種で、
9世紀頃から役肉兼用種として飼育されていた。
19世紀に入ってから乳生産についても改良されて、乳肉役の三用途兼用の牛とされた。
（アメリカでは乳牛として改良された。）

その後、使役に従事することがなくなり、乳肉兼用種への転換が進められた。
その結果、泌乳量を高めることを改良の第一目標に、産肉性の高い体型を備えることを
第二の目標として改良が進められた。

国や地域による変異がかなり大きい。
ヨーロッパ型とアメリカ型では、体型がかなり違っている。
前者は兼用種で乳肉比率6.5対3.5で、体躯は長く広く充実、
後者は乳用種の特徴をもち、体積は豊かで、乳房は発育良好。

【日本での存在】
本種は明治の後半に奨励品種となり、純粋繁殖（同品種のみで繁殖すること）も行われたが、
わが国では乳肉兼用種という通念からしだいに離れて肉を重視する方面に進み、
兵庫県や鳥取県などの和牛の改良、特に兵庫県但馬地方の肉牛の改良に大いに貢献した。
その後、肉用としての黒毛和種の改良には独自の方針が立てられ、
また乳用種としての用途でも乳量の多いホルスタインに圧倒されて、しだいに減少していった。

***********************************************************************
今年の頭、1月に出荷したデコポンが毛色が濃いめで、
サシが程よく入っていたことを考えてヨーロッパ型かな、
と想像していました。
それに対して、今回のプリンスは毛色も淡めでタイプが違うし、
アメリカ型なのかなぁと感じるようなお肉の仕上がりです。

23.6カ月齢で、生体で944㎏・枝重545㎏までになりました。
さすがブラウン、立派な重量。
下記、枝肉内容です。

ロース芯

バラ

モモ

脂質

切断面

ロース芯は真ん丸でしっかり大きくて、
筋間脂肪も厚すぎず、育成期の環境の良さを感じます。
バラは程よくサシが入っていて厚みもあり、
ちょうどバランス良い感じ。
全体的にお肉は赤身寄りなので、塊で周りをガリっと焼いて
赤身をガッツリ食べたい方に向いてそうなタイプです。
きっとサクサクサクサクいくらでも食べられるやつ。笑

ブラウン王子のプリンスくん。
もう少し枝で枯らして、繊維をほぐしてあげて
12月5日過ぎくらいに加工予定です。