はじめまして。
福島・二本松のエム牧場さんから短黒牛が入荷しました。

短黒牛は赤身の旨味が強い短角牛と滑らかな肉質の黒毛和牛の掛合せ。
和牛同士の掛け合わせなので、品種としては和牛間交雑種と呼ばれ、
和牛の仲間になります。
エム牧場さんでは10年前の2015年に「短黒牛をつくろう!」
と吉田社長を筆頭に動き出し、まず岩手の市場で
後の母牛となる短角のメス仔牛を導入するところからスタート。
その短角メスと黒毛和牛のオス牛の自然交配で、短黒を生ませて、
その子を30カ月齢近くまで育てあげ、やっとお肉として
出荷がはじまったのが2020年とのこと。
1つの「牛」を作り上げるのにはそのくらい時間がかかるということです。
東京宝山としては今年の頭から、
都内のこだわりスーパー「信濃屋」さん向けに
数頭、取り扱わせていただきましたが、こちらでご案内して
飲食店の皆さまにお届けさせて頂くのは今回がはじめて。
私自身もとても楽しみです。
もともと、エム牧場さんが短黒牛をつくりはじめたのは
2011年の東日本大震災の影響で、放射能の風評被害で
福島県の農産物が大打撃を受けたのがきっかけ。
「福島にしかないブランド牛」をつくりあげて
福島の牛の価値と信頼を取り戻そうとしたそうです。
そのあたりの経緯がこちらの記事に詳しく紹介されています。
なにか新しい取り組みをスタートするときに周りから
からかわれたり、冷やかされる感じ、私もよく分かります。
でも「実際に行動して、それをやり続けた人が強い」
と今は実感しています。
最近、あちこち動いている中で求められるのが、
霜降りの量をどこまでも追求したお肉ではなく、
赤身の味がちゃんとする、程よいバランスのお肉だと感じます。
でも、ここまで霜降りを追求して改良が進んだ
純血の黒毛和牛では、今まで通りの肥育をしたら
食べ手が求める以上の霜降りが入ってしまうのが現状。
「では、どうやってその能力を程よく押さえて、
消費者の方々が求める肉質の牛肉をつくりあげる?」
という話が良く出ます。
「餌?飼い方?品種?」
このうちの「品種」が今回のような取り組みだと思います。
そういった意味で、頭数が多いものとしては
ホルスタインと黒毛和牛を掛け合わせた交雑牛が
全国各地で育てられ、現在、安定して求められ続けています。
その中で、オリジナルのブランドを、ということで
岩手の短角牛の赤身に目をつけられたことは
その美味しさを信頼して、かれこれ10年以上、
短角牛を扱ってきた自分としても嬉しいことです。
そして、身体の強い短角牛の血を引いた短黒も
やっぱり身体が強く、めったに風邪もひかないので
ほとんど抗生剤を使うことなく、育てられるとのこと。
さらに、上にあげた中の「餌」に関しても、
エム牧場さんでは牛の能力やニーズの変化に対応した形で
今年頭から短黒たちの餌を地域で採れたものの比率を増やして、
よりナチュラルな方向に変えられました。
今あげているのは、デントコーン、稲WCS、牧草、キノコの菌床に加えて
モネンシンフリーの配合飼料を1日3㎏程度。
その影響が間違いなく、牛の仕上がりに出てきていると感じます。
そんな変化も含めて、一緒に向き合わせてもらえていることが
とてもありがたく、勉強になります。
ちなみに、今回の子はこちら。28カ月齢♂

A2(BMS3)・427㎏で、格付けはこちらでした。

実際の内容がこちら。
ロース芯。

バラ。

モモ。

切開面。

脂質。

うーん。やっぱり好きです。
まず、肉色の濃さが味の濃さを期待させてくれます。
ロース芯の大きさからも育ちの順調さを感じられ、
そのサシ加減も短角の赤身にちょっとだけ、
黒毛の血がいるのが分かる、程よいくらい。
バラには黒毛の能力の歩留りの良さを期待しつつ。
でも、皮下脂肪が厚めなのがやっぱり短角の血だよね、
と感じさせてくれるのもご愛嬌ってことで。笑
短黒の経験値が高い方々に話を聞くと、
短角と黒毛、どちら寄りに出るかで、
パターンとして割と幅があるようですが、
それも含めてこれから楽しんでいけたら嬉しいです。
ちなみに今回は短黒3頭、同時に出荷だったのですが、
この子が一番、短角の血を強く感じられました。
それぞれの個性が一番光る形で、これから
皆さんのお手元にお届けしていくことができますように。
がんばります。

今回の子はもう少し枝で枯らして8月中旬くらいに加工予定です。