今年もいよいよラストの1頭がやってきました。
2025年のオオトリは井さん親子が育てるあか牛、信行牛です。

今回の子は自家産のメス34カ月齢。
耳標に書いてある「こはる」はお母さんの名前で
この子自身の名前は「はる」ちゃん。
なんとなく、この名前に見覚えがあるなぁと思って
調べたらやっぱり。
私はこの子のお祖母ちゃんに山で会っていました。

「はるこ」さん。
2007年に井さんの牧場で生まれて、2023年に出荷されたようですが、
16年間、井家の山でお母さん牛として大活躍してきました。
また「はるこ」の娘さんたちも「こはる」さんのように、
お母さん牛として残されている子も多いです。
きっと繁殖牛として良い血筋なのだろうなぁと。

私がこの子たちに会ったのは、今からちょうど5年前。
あか牛2頭・黒毛2頭のたった4頭の繁殖牛だけが山1つ分の牧野に
放されているところに信行さんが連れていってくれました。

こういう場所を見せてもらうと、本来、
牛たちがそれぞれの土地で飼われていた意味が
なんかふっと実感できて、仕事の視野がぐっと広くなります。
草があれば生きていける牛だからこそ、
これまでもこれからも、私たち人間と一緒に
共生していく意義がお互いにきっとあるのかと。
私はそう思って、牛たちと関わりを持つ仕事に
向き合わせてもらっています。
なので、今の価値観の中ではまだまだ主流ではないですが、
できる限り、放牧を取り入れたり、
粗飼料主体で育てられている牛たちのお肉を
積極的に扱わせてもらっています。
岩手の短角牛がそのことを最初に私に教えてくれたのですが、
その流れで続いて会ったのが、井さんのくまもとあか牛でした。
北と南で地域が変われど、それぞれの場所に合った牛種で
本来、草食動物である牛の生理に合った育て方に
取り組まれている方がいることに感激しました。
また、そうして育てられたあか牛のお肉は
私もずっと噂に聞いていたくらい、料理人さんたちから引く手あまたで。
今は息子さんである雅信さんが生産現場を引き継いで、
同じやり方を継承されようと頑張っておられます。
なんとか途切れることなく、今後も続いていくといいなぁと思って
私もお肉を扱い続けさせてもらっています。
そんな井さん親子のドキュメンタリー映画『村で生きる』を制作した、
「こばやしなかむら映像」さんが上映会を開催するための
クラウドファンディングにチャレンジされています。
私たちも日常見れない生産者さんたちの村での暮らしや葛藤を
知ることができる貴重な映像を記録として残してくれました。
良かったら、ぜひ覗いてみて頂けたら嬉しいです。
https://www.glocal-cf.com/project/muradeikiru
そして、肝心の今回の「はる」ちゃん34カ月齢メス。

「前回の丸っこい子ほどではないですが、そこそこお肉付けてきました。」
という雅信さんの言葉通り、枝肉重量で370㎏になってくれました。
月齢から考えれば、やや物足りない重量ではありますが、
重量がなかなか乗らなかった1年前くらいに比べると
少しずつ重量は戻りつつあります。
実際の内容です。
ロース芯。

バラ。

モモ。

脂質。

切開面。

ロース芯がハート芯(形が真ん丸じゃなくて凹みがある形)
になってしまっていて、ちょっと残念。
育成の頃に食い込みがうまくいかない時期があったのかなぁと。
ただ、味わいには影響はなく、ロースのサシは
A2(BMS2点)としては、程よいバランス。
そして、今回の子は脂質がしっとりと良い仕上がりです。
なんといっても、34カ月齢のメスのあか牛というだけでも
すでに貴重な存在です。
井さん親子が繋いでいこうとしている取り組みを
お肉を通して皆さんにお伝えすることができますように。
「はる」ちゃんで皆んなが2025も良い形で締めくくりができるよう。
枝であと1週間くらい枯らして、12月半ばに加工予定です。