【入荷情報】エム牧場・短黒牛♀28.4カ月齢

秋の収穫を祝う、中秋の名月。
そんな季節にやってきたのは福島・エム牧場さんの短黒牛です。

前回、8月に出荷した1頭目の短黒♂がバランス良く、
味わいもとても評判良かったので、引き続き、
短黒牛たちを扱わせていただくことになりました。
2頭目の今回は28.4カ月齢のメスです。

短黒牛は赤身の旨味が強い短角牛と滑らかな肉質の黒毛和牛の掛合せ。
和牛同士の掛け合わせなので、品種としては「和牛間交雑種」と呼ばれ、
和牛の仲間になります。

もともと、エム牧場さんが短黒牛をつくりはじめたのは
2011年の東日本大震災の影響で、放射能の風評被害で
福島県の農産物が大打撃を受けたのがきっかけ。
「福島にしかないブランド牛」をつくりあげて
福島の牛の価値と信頼を取り戻そうとしたそうです。
そのあたりの経緯がこちらの記事に詳しく紹介されています。

有限会社エム牧場|最新事例|産業復興事例集

そして、短黒牛を作り始めて10年目の今年頭から
餌に関しても新たなチャレンジを始められました。
今までは一般的な黒毛和牛の肥育と同じスタイルで
稲わらと配合飼料で育て上げていたのですが、
そのうちの一部を餌をよりナチュラルな方向に変えられて、
地域で採れたものの比率を増やして育てています。

その新しい餌の内容とは、デントコーン、稲WCS、牧草、
キノコの廃菌床に加えて、モネンシンフリーの配合飼料を
1日3㎏程度です。

<向かって左から、稲WCS・キノコ廃菌床・デントコーンサイレージ>

こちらに牧草と配合飼料を加えて、ミキサー車で餌を配ります。

<ジャージーや短黒など多様な品種をこの餌で育てています>

餌を変更してから10カ月近く、明らかに
牛の仕上がりが変わってきているようです。

もちろん、餌屋さんたちの英知が詰まった配合飼料主体で育てた方が
重量もしっかり乗るし、同じ短黒でもよりサシが入る傾向でした。
そして、それを求めるのが今までの価値観だったと思うのですが、
消費者の嗜好も、牛自身の能力も、輸入飼料の単価も、
すべてが変わった今も同じやり方やゴールだけが正解なのか?
「もっと生産者さんにとっても、消費者の方々にも、
 いろんな選択肢があっても良いのでは?」
と思って、ずっとお肉を扱い続けてきています。
今回のエム牧場さんの餌の変更もこれからの未来に向けて
私は意味ある取組みだと考えるし、今の仕上がりの牛たちが好みです。

既存の価値観とは真逆な部分もあるので、
大多数には理解されないかもしれないですが、時間をかけて、
深く理解してくれる仲間たちを築いてきたつもりです。
もちろん、最終的に消費者の方々に
美味しく食べてもらえるものでないといけないし、
経営体として、生産・流通・外食・小売りの誰かが
泣くものであっては継続ができないと思っています。

様々なお声を聞きつつ、細かな軌道修正をしながら、
引き続き、一緒に答えを探っていけたら嬉しいです。

そして、そんな今回の子の格付けはこちら。

実際の内容です。
ロース芯。

モモ。

バラ。

脂質。

切開面。

枝肉全体。

サシはBMS3と程よいバランス。
純血の短角だと、BMS2がスタンダードです。
でも、この餌でも皮下脂肪がやや厚めになるのは
やっぱり短角の血から来るのかなぁと想像しつつ。
その脂の色はBFS4と、餌の内容を反映して、
ややクリーム色がかっています。
黒毛の血を感じるところはバラの厚みや内容がしっかりしているのと
きっと全体的な食感に黒毛の滑らかさが出てることを期待して。

今回は脂がしっかり赤身を守ってくれているので、
それを逆に長所として捉えて、前回より少しだけ長めに
枝で枯らしてみようかなと思っています。

秋が深まる10月半ば過ぎ頃、加工予定です。