新しい季節を迎える立春を前に、岩手・雫石からやってきたのは
中屋敷ファームのジャージー男子です。

この子は2年前の夏、お友達ジャージー男子2頭と一緒に、
近所の放牧地に上がって、約半年を過ごしました。


牛舎から車で10分の距離にこの環境があるって
やっぱり恵まれてるなぁって思います。
ちなみに、この放牧地の向かい側には広い採草地が広がっています。


この採草地は以前、高原野菜をつくっていた方が離農された後、
誰も使っていなくて、荒れた耕作放棄地になっていたのを
中屋敷さんが数年かけて、採草地として使えるところまで
作り直したそうです。
となると、草食動物である牛がいなければ、
この光景はなくなって、どんどん雑木林に戻ってしまうわけで。
こういう話を聞くたびに、やはり、牛たちと地域やヒトは
共生しているんだなぁと実感します。
牛たちがいることで守られている景観や環境がある、
こういう側面をぜひ皆さんに知ってもらいたいです。
そして、この子が生まれた2020年はコロナ禍1年目。
未知のウイルスにみんなが恐れおののいて、
移動が思ったようにできず、一番悶々としていた時期でした。
唯一この子たちに会いに行けて、画像フォルダーに残っていたのが
2020年10月、3カ月齢くらいの頃です。
もうすぐ離乳の時期で、少ししかもらえないミルクに
がっついていた2頭が印象的でした。


そして、この翌年の5月~10月末までの放牧期間を終えた後は
中屋敷さん手作りのゴハンでずっと育てられました。

「一番草」「有機大豆サイレージ」「デントコーンサイレージ」
「子実トウモロコシ」「くず大豆」「米ぬか」「きのこ廃菌床」のMIX。
国産飼料100%です。
しかも、頭の3種類は中屋敷さん自身が育てて収穫したもの。雫石産です。
飼料自給率25%の今の日本でこれは素晴らしいこと。
特に、いろんな世界情勢が絡んで、輸入飼料の高騰が止まらない現状、
飼料の国産化を目指さないと続けていけないことを
畜産にたずさわる全員が間違いなく、感じていること。
それに向けて、中屋敷さんは数年前から着々と取り組んできました。
そして、この餌の違いが分かりやすいのが、こちら。

このジャージーのクリーム色の脂は、
今の日本の市場における格付け評価だとマイナス点になります。
白い脂が上物の証です。
となると、上記であげたような脂が黄色になる要素のカロチンが入った、
牧草や、茎・葉が入った発酵飼料を農家さんたちは
お肉になる仕上げの頃にあげることはできません。
自分たちの取組みは市場評価と別の価値観で動いているので
こういったことが可能ですが、実際にお肉を食べる方々が
「目の前にある一切れのお肉がなにを食べて育ってきたのか」
考えてくれるきっかけが少しずつでも増えて、
全体の価値観が多様性にあふれるものになったらいいなぁと
いつも願っています。
そして、今回の子の実際の内容です。
生体680㎏、枝重377㎏、安定の歩留り55%。笑
ロース芯。

バラ。

モモ。

脂質。

切断面


このエサで育てられた子たちの脂質はいつも良くて、
格付け評価はさておき、「美味そうな脂だね」とよく言われます。
1年目の夏の放牧で、もう少しロース芯が大きくなってくれるかなぁって
期待していたけど、そんな一筋縄にはいかないのが
やっぱり、ジャージーです。笑
ただ、程よくサシの入った赤身は、ジャージーらしく
濃ゆい味わいが期待できそうです。
大豆をたっぷり食べて育ったジャージーくん、
節分の豆まきにあわせて、堂々とやって来てくれました。
もう少し枝で枯らして、2月半ばくらいの加工予定です。