【入荷情報】中屋敷ファーム褐黒たまこ♀33.3カ月齢~①育ち編

2年前の夏、岩手・雫石の放牧地で過ごしていた中屋敷カルテットたち。
いよいよ、この子たちの出荷タイミングがやってきました。

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最初にやってきたのは、左から2頭目の褐毛×黒毛です。
中屋敷さんちにいる褐毛のお母さん「たまこ」から生まれた
1頭目の子なので、「たまこ2」ちゃん。
ちなみに、お父さんの種は岩手の但馬系の種雄牛「菊安舞鶴」です。

この子たちは、地域にある素敵な環境を生かして
1歳を迎える夏の半年を放牧地で過ごしました。
そこに魅力を感じるのは、育成期を放牧地で過ごすことで
身体の根幹がつくられることに可能性を感じているからです。
(加えて先日、短角牛を放牧で育てる田村社長が、
「放牧地で育った子が強いのは母乳や運動に加えて、
 太陽を浴びていることもなんとなく関係ある気がする」
と話していたのは興味深かったです。)

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確かに、のびのび、キラキラしたこの時間を思い出すと、
私まで、いろんなモヤモヤが吹き飛んでいきます。

中屋敷父と、採草地に座り込んで、カルテットたちがいる
放牧地を眺めながら牛談義中。笑
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中屋敷さんちから上がった4頭たちは放牧地の中でも、
やっぱり近くで一緒に行動していて、お友だちがいるのも
間違いなく、心強いんだろうなぁと。
だから、たまたま貴重な1枚目の4頭並んだ画像が撮れたようです。

そうして、こんな贅沢な環境から晩秋に山を降りて牛舎に戻った後、
この子たちをどんな餌で育てていこうかっていうときに心強い協力者が。

ある研究会で赤身肉の流通に関してお話させて頂いたことをきっかけに
この頃から、地域資源を生かした牛の育て方について、
盛岡にある東北農研さんにご相談させて頂くようになっていました。

せっかく、このようにサシを求めるのではない子たちを
放牧を取り入れた健やかな育て方をしているのであれば
ここから一般的な配合飼料で育てていくのはちょっと違うのかな、
という考え方は関わる皆んなに共通していました。
輸入飼料に大半を頼る畜産の形がこの先、未来永劫に続くのは難しいだろう、
ということもそれぞれの立場で感じています。
そして、ここには地域にある資源を生かそうと思えば
生かせる環境があるよね、と。

そうした話をしていく中で、東北農研の方がご提案してくれたのが、
大切なタンパク源となる「大豆サイレージ」でした。
飼料米やトウモロコシなどのエネルギー源を自給する方法は、
かなりできるようになってきているけど、
タンパク源をどう補うかが、国産飼料の大切なポイントになるそうです。
そうして、同じようにタンパク源の代表であるアルファルファに比べて、
大豆の方が日本の気候に合っていて育てやすいそう。

この大事な大豆を中屋敷さんが自分で栽培してくれました。

そうして、凄い技術が集結しているのがここからです。
食用の大豆は使える除草剤が決まっているけど、
飼料用の大豆は、許可されている除草剤がないため、使えません。
でも、そのまま栽培したら雑草だらけの畑になってしまう。
そこで、まずイタリアン(牧草)の種を前年の9月に撒いて、
5.6月で2番草まで採草します。
その後すぐ不耕起のまま、大豆の種を撒くそうです。
そうすると、そのイタリアンがマルチ替わりになって
雑草が生えてこないそう。

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こんな感じになります。
これを『リビングマルチ』(生きた植物をマルチとして用いる技術)って言うそう。
だから、必然的に有機栽培の大豆になります。

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(この時は大豆収穫の1週間前くらいでした。)

なんて、理にかなったやり方なんでしょう。
牧草も2番草まで採れて、タンパク源となる大豆も茎や葉ごとサイレージにして
餌として使えるって、最高です。しかも、無農薬。
農研の方いわく、食用の大豆分野を侵食するものではまったくなく、
あくまで、畜産農家さんが持っている生産基盤・圃場の中で
牧草の一種として育てる取り組みとのこと。

こちらに加えて、デントコーンサイレージと一番草、
そして、繋ぎのための配合飼料を7%程度加えてMIXして、
餌にしてくれたのがこちらです。

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粗飼料と濃厚飼料がMIXされたTMRの状態で、93%自給飼料。

中屋敷さんのところで採れた一番草がガッツリ入っているので、
ビタミンAもたっぷりだから、脂もクリーム色になるだろうし、
サシを追求するのは難しい餌です、と。
加えて、水分量も多くて、半分くらいが水分だから、
もしかしたら水分量が多い枝肉になるかも、とのこと。

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(採草風景)

一般的な格付け評価のもと、枝肉市場で販売するには厳しいけど、
太陽→草→肉の流れが目の前で見られて、感じられるこの取り組みは
私には、とても魅力的に感じられるのです。

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今回、農研の中でも栽培・餌・肉、それぞれの専門の方々が
2年前から、この取り組みに携わってくれてます。
そして、実際に取り組む生産者である中屋敷さんが
大変な手間がかかるけど、意欲的に向き合ってくれて、
その後の流通である自分まで繋がって。
あとは最終的にお届けする料理人さん、消費者の方々まで。
これが全部繋がって初めてできること。

未来ある取り組みと思う、こうして仕上がったお肉が
皆さんに求められる内容だといいなぁとドキドキしながら
枝肉に会いに行きました。

(育ちだけで長くなったので、枝肉編に続きます。笑)
【入荷情報】中屋敷ファーム褐黒たまこ♀33.3カ月齢~②枝肉編