あれから1年経っても人の世は相変わらず
コロナに振り回されていますが、
生産現場ではそんなことはまったく無関係に、
牧草も青々としてきて、牛たちの放牧がスタートしたり、
田植えがはじまり、デントコーンが播種されたり、と
萌出る新緑の季節がやってきました。
牛たちの成長もしかり。
農家さんたちに日々お世話をしてもらって、順に出荷のときを迎えます。
私の役割は、大切に育てられたそんな子たちを滞らせることなく、
ちゃんと生きる形で皆さんに召し上がって頂くところまでバトンを渡すこと。
コロナに心まで振り回されないように頑張ります。
さて、そんな中、熊本阿蘇・産山村からやってきたのは井さんのあか牛です。
今回はメスの自家産。30.4カ月齢です。
息子さんの雅信さんのところで、途中まで肥育していたのを
信行さんが半年くらい前に引き取って仕上げてくれたそうです。
父子でのバトンタッチ。
(雅信さんの餌も、信行さんと同じ国産飼料100%)
なかなか産地に行けないこの1年ですが、
なんとも嬉しい奇跡のようなことが。
産山村にはこの1年で唯一、去年10月に訪問したのですが、
その時の画像を引っ張り出していたら、、、
なんと私はこの子のお母さんとお祖母ちゃんに会っていました。
それは井さんの小さな軽自動車で、
4頭だけ繁殖牛たちが放牧されている山に
連れていってもらったときのこと。
この一番先頭で登場してくれた子が今回出荷の子のお母さんでした!
そして、調べてみたら、その後ろからそっとついてきている子が
さらに、このお母さんのお母さんでした。
(出荷された子のお祖母ちゃん)
そうか、あの素敵な山に放牧されていたのは母娘の繁殖牛だったんだ。
そして、そんな風に、井家で大事にされている血筋の子が今回出荷された子なんだ。
あの山での出来事はとても印象的な光景と時間だったので、
なんだか、ご縁を感じてしまいます。
思わず、さらにそのお母さんまで調べました。
さすがに曾祖母は15歳で引退して出荷されていたけど、
お祖母ちゃんは井家で生まれて14歳でまだ現役。
こんなところからあか牛の繁殖牛としての強さを改めて感じます。
本人には会っていないけど、お母さんとお祖母ちゃんに
会わせてもらっているとなると、なんとなく背筋がピンとします。
ちゃんと大切に扱わせていただかなくちゃ。
そんな子の仕上がりは井さんが出荷前に、
「大きくはないけど、雌らしく丸っこくなっています!」
とお話していた通り、429.5㎏でこんな内容でした。
ロース芯も丸く大きくて、美しいコザシがさすが。
放牧地と牛舎を自由に行き来できる雅信さんの牧場で
2年近くノビノビと育った証だろうなぁ。
バラの厚みといい、とても優秀な肉周りです。
モモの赤身とサシのバランスも良い雰囲気。
筋間脂肪の無駄のなさと、ほんのりクリーム色の脂は、
良質な粗飼料主体の井さんちの手づくりゴハンだからこそ。
ちなみに、この子はとても頭の良い子で、
スタンチョンも自分で外せちゃうような賢い子だったそう。笑
20日間ほど枝で枯らして、5月最終週に加工予定です。
もうこれ以上同じことを繰り返すことなく、
人の世も落ち着いてくることを祈りつつ。