8月中旬の岩手・雫石の光景です。
こんな最高の環境の雫石町から、次の子がやってきました。
中屋敷ファームのジャー黒♂33.9カ月齢です。
いつものように、岩手・奥中山の三谷牧場さんで生まれたジャー黒です。
生まれて1ヶ月で、奥中山から雫石にやってきてから、
お隣にいるジャージー君とずっとペアで育ってきました。
大事な胃づくりの時期は良質な粗飼料をたっぷり食べて
しっかり内臓をつくってもらって。
その後はずっと、広めの贅沢なお部屋でジャージー君と仲良く一緒に。
身体をつくる育成期を終えて、肥育がスタートしたこの頃、
まだ国産飼料に向けた取り組みが本格的に始まっていなかったので、
最初の頃はこの子たちも通常の配合飼料で育てられていました。
そんな間に、東北農研さんと中屋敷ファームの、
国産飼料に向けた共同の取組みが少しずつ、進んでいきました。
中屋敷さん自身での有機大豆の栽培、そして、農研さんに
それも含めた地域の餌を主体にした飼料設計をしてもらって。
(こちらは、今年から栽培が始まったデントコーンと、
3年目になる大豆栽培の圃場に掲げられた看板です。)
そうした最初のチャレンジだった中屋敷カルテットたち4頭は、
放牧を終えて山を降りた後、国産飼料93%の餌で肥育され、
そのお肉たちはクリーム色の脂も含めて大変良い評価を頂くことができました。
その餌の内容は、有機大豆サイレージに加えて、
デントコーンサイレージと一番草、そして繋ぎのための7%の配合飼料でした。
そうして、続いて第二弾のチャレンジになる、こちらの2頭は
今年に入ってから配合飼料をやめて、最後の半年ちょっとの仕上げを
ついに、国産飼料100%(すごい!)の餌に切り替えました。
その内容は、前回と同じ「有機大豆サイレージ」「デントコーンサイレージ」「一番草」に加えて
配合飼料の代わりに「子実トウモロコシ」「雫石産のくず小麦」「もみ米サイレージ」
を入れてくれたそうです。
最後の「もみ米サイレージ」は初めて聞きましたが、
様々に取り組まれている飼料米の活用法の一つで、
完熟した稲を刈り取り、水を加えてサイレージ貯蔵するもので、
乾燥コストをかけずに飼料米を餌にする方法なんだそうです。
山形県の真室川町は「もみ米サイレージ」のメッカとのこと。
畜産の情報『飼料用米(籾米サイレージ)の栽培・加工・利用の実態と課題』
いろいろな方法があるんだなぁと知れば知るほど、勉強になります。
方法はいろいろあれど、いかに耕種農家、畜産農家が手を組んで
近い未来に向けての想像力を働かせながら、
お互いの負担が小さく、そして、メリットが大きくなる手段を
それぞれの専門家の知恵をもらいながら進めていけるかが
ポイントなんだなぁと思います。
実際に、今の農研さんとの取り組みにしても、
栽培の専門家、飼料の専門家、肉の専門家、
3者の持ってる技術を集結してアドバイスしてもらっています。
さて、そんな地域の餌100%で仕上げられた、まずは1頭目のジャー黒くん。
育成のおかげと、配合飼料の期間の影響もあるのか、
出荷のときには、こんな立派な姿に育ってくれました。
ちなみに、父である黒毛の血統を確認したら、
『光彦』(光平照-平茂勝-安福(岐阜))だったので、
但馬系統の血が強い子でした。
枝重量は501㎏、格付けはBMS5のB3になりました。
生体の時点での体型も良く、ジャー黒で良くあるように
鼻の周りが白くなる感じもなく、全身真っ黒だったのもあって
なんとなく黒寄りで、サシがある程度入っているかなぁと想像していましたが、
やっぱりジャー黒の中では程よくサシが入っているタイプでした。
バラも厚みがあり、使い勝手も良さそうです。
モモあたりはバランス良く、モテそうな肉質の雰囲気。
筋間脂肪がいつもより厚めなのは肥育初期の配合飼料の影響なのか。
脂の色は安定のクリーム色だけど、食べてきた期間の長さの違いか
カルテットたちに比べると少しだけ薄めな感じです。
脂質自体は最後の半年食べてきた餌の影響を受けた脂肪酸組成になっているはずなので、
きっといつもの軽やかな仕上がりになっているかな、と想像しています。
実際に醸し出しているオーラが美味しそうで、
芝浦でも「美味そうな枝だねぇ。」って言われて、
誇らしげに、えっへん!ってなっていました。笑
料理雑誌で、ある料理人さんに、
『日本人にとっての赤身牛肉の到達点だと思う。』
と評価していただいた中屋敷ファームのジャー黒牛。
今回の子もその期待に応えることができるといいなぁと思います。
こちらはもう少し枯らして、9月2週目あたりに加工予定です。
その頃には世の中の状況が少しでも上向いてることを願いながら。