今年のゴールデンウィーク。
岩手・奥中山にある『おさんぽジャージー』三谷牧場さんの
放牧スタート日の光景です。
約半年ぶりに広い大地に放たれた牛たちが
大興奮して、私たちに突進してこようとしたり、
土に頭をこすりつけたり、そして土を食べたり。
また、昨年の冬に生まれたばかりで放牧未経験の子が
牛舎から出てこれなかったり。
逆に、初めての放牧に嬉しすぎた同級生は電柵をぶっちぎって外に出てきたり。
そして、ひとしきり、生草をむしぼり食べた後は
お腹もいっぱいになって、その心地よい外の空気に
ほのぼの、ゆっくりまどろみはじめる牛たち。
三谷牧場で、1年で最も大切な1日という「放牧祭」。
素敵で、大好きな光景です。
牛たちに個性やそれぞれの性格があるんだなぁっていうのも
良く伝わってきます。
今回やってきたジャージー母さんの『ユキ』さんも
こちらの三谷牧場で今年の1月まで、搾乳牛として活躍していました。
3年前の放牧スタート日のユキさんの姿です。
ユキさんのお人柄(牛柄)についてはこちらのブログに
三谷さんが残してくれています。
黒金ちゃんとユキ
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ユキは以前腰を痛めて死んでしまったデストロイヤーマルの同期生で
あの暴れん坊のマルの相方はユキにしか務まらず
いつもマルと一緒に頑固者コンビだった。
マルほどではないけれど、ちょっと気が強かった。
マルのような「自称王者」が心を許す、数少ない牛の1人だった。
ユキがいなかったら、どうだったかな。
ユキがいてくれたから、一緒にいてくれたから
皆が幸せだった。
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って。
私がもしユキさんだったら、こんな風に「乳」以外の役割で
自分の存在を認めてもらえるの嬉しいなぁって思う。
ユキさんはその後、三谷牧場での搾乳牛としての暮らしを引退された後、
今年1月に同じ岩手の雫石・中屋敷ファームにやってきました。
最後の方はあまりお乳も出なかったせいか、
比較的肉付きの良い状態でやってきたようです。
そして、お肉になってからもまた愛してもらえるように、
中屋敷さんの手によって宝山のエコフィードなどで
約半年間の再肥育期間をかけてお肉として仕上げてもらい、
このたび出荷されて、東京・芝浦にやってきました。
9歳で、枝重246㎏になってくれました。
さすが気が強いと言われるだけあって、堂々とした立派な肉質です。
ロース芯も真ん丸で美しく、程よいサシも入りながら
再肥育のおかげで、肉も程よく乾き、
全身を質の良い脂に包まれています。
ジャージー母さんたちのお肉は、
その生き様、経験や時間の厚みなどが重なって
召し上がってくれた方々に、強い存在感をいつも残してくれます。
今回のユキさんもその風貌がこの枝肉から
ヒシヒシと伝わってきます。
バラが乾きすぎないよう、肩・バラは先に今週、
モモ・ロースはさらにもう少し枯らしてから加工予定です。
ユキさんが生きてきた9年間に失礼がないよう、
ちゃんと良い形でお肉を繋いでいけるように頑張ります。