続いて、2025年節分の日に雪降る岡山・新見市から
出荷されてやってきたのは日本最古の蔓牛の「竹の谷蔓牛」です。
今回の子は『井武輝2』♂34.8カ月齢。

1830年に誕生した竹の谷蔓牛は、
和牛に携わるものにとってはどこか憧れの存在です。
おそらく、生産者さんにとっても、
流通・販売に携わる立場としても。
もし、その存在を知っている料理人さんがいれば、
同じ気持ちを持たれるかもしれません。
2年前にご縁をいただいてから、今回の『井武輝2』で
5頭目の竹の谷蔓になります。
最初はその存在を知らなかった料理人さんたちも
お届けを重ねるごとに、竹の谷蔓の持つポテンシャルに
可能性と魅力を感じてくれて引き合い強くなり、
モテモテになりつつあることを嬉しく思います。
黒毛和牛の基礎をなす血統の元祖である「竹の谷蔓」は
登記上は「黒毛和牛」になるのですが、
改良されていないので、サシが入りずらく、
大きくもなりずらい、昔ながらの和牛です。
そのため、今の経済効率優先の価値観においては、
評価されず、どんどん飼う方が減っていて、
現在、純血は全国で50頭もいないくらい、とのこと。
岡山県新見市で約200年前に誕生したこの血筋が
そのお肉が評価されることで、その土地に合った飼い方で
地域の牛として、まさにテロワールある牛として
これからも生産が続けられるといいなぁと強く思います。
というのも、黒毛和牛の改良の方向性が
「早く」「大きく」「霜降りが入るように」
という、ひとつの価値観に向かって大きく舵を切ってきた中で、
この個性を残すことはとても意味があることだと思うのです。
全国的に、同じ黒毛の血統が出回って、血が近くなっている中、
世の中の進化から取り残されてきたような存在が竹の谷蔓です。
そして、黒毛の改良はとても優秀な形で進んだものの、
「それが本当に食べ手が求めてきたものだったのか?」
という議論が常に身の周りでされているのが現状です。
であれば、黒毛の血筋でありながら、
サシが入らず、赤身の味わいをしっかり感じられ、
時間をかけて大きくもなりすぎず、
でも筋繊維に関しては黒毛らしい滑らかさを持ち合わせている。
そんな牛の血筋が生き残ることは
きっと先々、大事な意味を持つのでは?と思うのです。
そのことに流通の立場である自分がもし関われるとすれば、
その存在を知ってもらって、お肉をちゃんと正しく届けて
食べ手の方々に評価してもらうことで、存在価値を上げていくこと。
そうすることで生産者さんたちから、
ちゃんと生産コストに見合う単価で仕入れができるようになること。
そうすれば、生産者さんたちも未来が見えるようになるのかなぁと。
まずはできることを地味に地道に。がんばります。
そして、2年前に、竹の谷蔓について、
詳しくまとめたブログはこちらになります。
また、今回の子を育ててている「いろりカンパニー」さんの、
牧場と竹の谷蔓牛が紹介されているYouTubeがこちらです。
今回の子もちゃんと竹の谷蔓らしく、
34.8カ月齢の去勢で、枝重量417.1㎏・B3(BMS4)
という仕上がりでした。
内容はこちらになります。
ロース芯。

バラ。

モモ。

脂質。

切開面。

枝肉全体。

まずは牛種関係なく、重量感・赤身加減ともに好みのバランス。
この内容はきっと愛されやすいだろうなぁと。
そこに改良の加えられていない竹の谷蔓という血筋の赤身が
どのような味わいを表現してくれるのか楽しみです。
そして、いつもはあまり気にしたことないのですが、
今回、脂肪酸測定値で、オレイン酸が55.5%でした。
実際に見ても感じることですが、脂質も良さそうです。
5頭では、まだまだ分かったなんて言えない竹の谷蔓のこと。
今回の1頭も丁寧に向き合っていきたいと思います。
こちらはもう少し枝で枯らして2月20日頃に加工予定です。