続いて、梅雨入り直前の関東に岡山・新見からやってきたのは
竹の谷蔓牛♂『井武輝1』です。

その名の通り、いろりカンパニーさん初代の種牛、
「井武輝」の血筋を引いた1頭目の男の子だそうです。

今年の2月に出荷になった「井武輝2」とほぼ同じ誕生日で
3日だけ先輩だったものの、そちらに比べて少し成長が
ゆっくりな子だったようで、4ヶ月遅れての出荷になりました。
この子の出荷一週間前、牧場見学をご希望されたバイヤーさんたちと
お久しぶりに、いろりカンパニーさんにお邪魔してきました。

岡山に到着したら、こんな看板に迎えられて
久々の訪問にテンション上がっていたのですが・・・、
当日は、梅雨前ながら雨降りの一日でした。

とはいえ、雨の中でもこのように、
牛舎の外に出て雨に打たれている子たちもいて、
牛たちは気持ち良さそうに自由に過ごしていました。
「井武輝1」、行く前は牛房の奥の方で寝てたらしいのですが、
私たちが行くと、ちゃんと人懐っこく寄ってきてくれました。



希少な血統の「竹の谷蔓牛」に向き合わせて頂くのは
今回で6頭目になります。
1830年に岡山・新見で誕生した竹の谷蔓牛は、
黒毛和牛の基礎をなす血統の元祖であり、
登記上は「黒毛和牛」になるのですが、
改良されていないので、サシが入りずらく、
大きくもなりずらい、昔ながらの和牛です。
そのため、今の経済効率優先の価値観においては、
評価されず、どんどん飼う方が減っていて、
現在、純血は全国で50頭もいないくらい、とのこと。
ただ、全国の黒毛の生産者さんたちの中でも
生産にこだわりを持っている方々にとって
この「竹の谷蔓牛」はどこか憧れの存在であり、
自分が知っている生産者さんたちでも、
導入されて育てられている方々が何人かいらっしゃいます。
全国各地の個性ある牛肉を扱わせて頂いている自分からしても
こういった絶滅危惧種的な存在ほど、実は
素晴らしい価値を秘めていると思っています。
いつもお話しているテロワールある牛肉そのもの。
そして、この血統を残すために流通に携わる自分ができることは、
この名前と美味しさをできるだけ多くの方々に知ってもらう、
そこに注力するのみと思っています。
美化して神格化するのではなく、身近にある存在として。
なので、最初はその名を知らなかったシェフの方々でも
頭数を重ねるごとに、どんどんリピーターが増えていることは嬉しく、
さらには、そこで召し上がった食べ手の方々にもこの名前を少しずつ、
認識してもらえていれば、と願います。
もう少し詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら
竹の谷蔓について詳しくまとめたブログはこちらになります。
今回の「井武輝1」は38.9カ月齢まで育てられて、
結果的に、440㎏・B2(BMS3)になりました。
竹の谷蔓らしさ全開の格付け、最高です。笑
実際の内容はこちらになります。
ロース芯。

モモ。

切開面全体。

枝肉全体。

細かいマーブリングの入った2等級であり、
赤身とはいえ、竹の谷蔓特有の細やかな繊維感が
ここからも伝わってきます。
じっくり時間をかけて、よくぞここまで成長してくれました。
私たちの元にやってきてくれてありがとうございます。
4・5等級が9割以上を占める今の黒毛去勢の中で
38カ月齢の2等級はある意味、本当に貴重なものです。
牛たちの世界にも価値観の多様性があってもいいよね、と。
ちなみに、次に出荷予定の子も見せて頂いたのですが、
さすが竹の谷蔓らしく、28カ月齢とは思えないほど
小ぶりな子だったので、年内出荷は難しそうです。
というわけで、今回の子が2025年最後の竹の谷になるかと。笑
お届けを途切れさせないように努力はしていくので
牛たちの成長に気長にお付き合い頂けたら幸いです。
今回の子はもう少し枝で枯らして、6月20日頃の加工予定です。